オレが情熱マンの理由(わけ)第一部昨年(02年)の秋から冬にかけてオレはモヤモヤとした毎日を過ごしていた。人生の半分を社会人として過ごし、自分の人生を振り返ってみたが、 毎日が何か物足りない。何が足りないのかわからない。モヤモヤの原因が はっきりしないまま、不完全燃焼な日々を過ごしていた。 ある朝、知り合いから突然掛かってきた電話にオレは驚いた。 接骨院の研修時代、世話になった先輩のKさんが、糖尿病による眼底出血で 両目が見えなくなったというのだ。 Kさんは柔道三段の腕前、身長183cm、体重160㌔のレスラー並みの体型で、 修行時代、時には悔し涙を流すまでしごかれ、叉時にはなけなしの金を はたいてラーメンをごちそうしてくれたりと、実の弟のようにオレを かわいがってくれていた。 俺はすぐさま病院へ駆けつけ、ドアを開けて目に入ってきたKさんの姿を見て 愕然とした。 柔道の稽古の時、オレがどんなに必死で投げようとしても、山のように動かなかった屈強のKさんが痛々しく目をガーゼで覆いながら力なく寝ていたのだった。 病室に入ってきても誰だかわからない。「Kさん、オレです」と声を聞いて初めてオレだとわかったようだ。起き上がろうとするKさん。しかしつかまる手すりが見えず、手が宙をさまよう。 元々豪快な性格のKさんは、「まあ、なってもうたもんは、しゃあないわ」と 気丈に笑っていたが、オレより四つしか年がかわらず、まだ小さな子供がいるKさんのことを思うとホントに胸が痛くなり、話しているときも必死で涙が 流れ落ちそうになるのをこらえていた。 帰り道、「あの年で目が見えなくなるのって、どんな気持ちだろう。子供の成長が見ることができないのってどんなつらさだろう。」と考える。 「もし、自分が目が見えなくなったらどうなるだろう。病気で動けなくなったらどうだろう。もっとああしとけばよかった、こんなことがしたかった、と後悔するやろうな」と忘れていた自分の人生のことを思い出し、またモヤモヤとした気持ちが湧き上がってきた。 そして、それは現実に起こったのだった。 (つづく) ジャンル別一覧
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